本書は生体系における情報伝達機構をエントロピーの法則に基づいて概説した斬新な解説書である。生体系での物質・エネルギー・エントロピーの一方向性移動,および生体系の絶対不可逆的な状態変化を重視して,「情報入手に伴うエントロピー発生」や「時計仕掛け機構」などに対する理論的研究を紹介する。特に生体内の計時機構については具体的に解説し,最後に新しい「生体情報力学」とも言える学問体系の建設を目指す著者らの見解を述べている。本書の内容は,生命物理・化学に対し今後の研究の指針を与えるものであり,基礎生物科学に関心を抱く学生・研究者にお薦めする。
[主要目次] 1. 序章-生命とは何か 2.情報とは何か-情報とエントロピーとの関係 3. 情報量の性質 4. 情報入手に伴うエントロピー発生の理論 5.
「時計仕掛け」仮説の熱力学的検討 6. 「時計仕掛け」仮説からみた生体内の計時機構 7. 終章-生体情報力学の建設を目指して 付録A.
熱力学とエントロピー 付録B. 統計熱力学の論理
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