理工系化学専攻学生の必須科目である熱力学ほど,実用的に必要でありながら,その概念が抽象的なために理解に苦しむ学問はないとも言われている。本書は著者の長年の講義経験を生かして,この難解とされている熱力学をわかりやすく解説したものである。 最大の特長は「現象から理論へ」という点にある。すなわち,化学的な身近な現象が熱力学的にどう説明できるか,という点から入ってゆき,多くの具体例を学びながら熱力学的な考え方,活用方法,限界が理解できるように構成されている。 本改訂では,初刷刊行以降の著者の講義経験を生かして説明を工夫し,例題・問題をより適切なものに差しかえるなど,教育的配慮が十分なされている。またIUPACルールに従って記述の見直しをはかっている。 小冊子ながら化学熱力学の必要十分な事項が親切丁寧に述べられており,大学理工系化学専攻学生のための教科書として最適である。 〔主要目次〕 1.序論 2.平衡と可逆過程 3.自由エネルギーの性質(1) 4.純物質についての平衡 5.エネルギー,仕事,熱――熱力学第1法則 6.反応熱,エネルギーの代数学 7.変化の方向――エントロピー 8.自由エネルギーの性質(2) 9.化学平衡 10.溶液の熱力学 11.理想状態からのずれ 12.平衡 付録 |