「実在とは何か」という問題は,ギリシア哲学の時代から現代に至るまで,多くの人々によって論じられてきた。本書は,この問題を,現代物理学の根幹である量子力学の知見をもとに探ろうとするものである。まず量子力学の観測理論とそれによってもたらされる世界像をわかりやすく解説し,つづいて著者の主張する「覆い隠された実在の理論」を,従来の実在論と比較,検討しながら詳述していく。観測理論の第一人者である著者ならではの,緻密かつ誰にでも理解できる理論構成となっており,理工系,人文系を問わず広く学生・一般読者にお薦めする。(原著:B. d'Espagnat, A la Recherche du R´eel, Le re‐ gard d'un physicien) 〔主要目次〕 1.序論 2.デモクリトスからピタゴラスへ 3.経験の哲学 4.分離不可能性 5.いじわるで不細工な幕間劇 6.科学主義についてのコメント 7.経験の哲学に対するアインシュタインの反論 8.他のアプローチ――懐疑的な注釈 9.覆い隠された実在 10.神話とモデル 11.科学と哲学 12.分離不可能性と反事実性 13.展望 14.結論 用語解説 |