感染症にはいまだに予防・治療手段が限られているものが少なくないため,個々の感染症に対する治療方法の開発とともに,「流行」という現象を解明してこれを予防・制御することが重要である。この感染症流行の全体像を理解し,予防・制御等の介入行為の評価を行うためには,数理モデルによる定性的・定量的定式化が不可欠である。また,感染症疫学のいくつかの主要な基本的概念は,数理モデルによる定式化を本質的に必要としている。本書は,感染症疫学における数理モデルの先駆的研究を行ってきた執筆者陣により,斯学の基本的な考え方から最近の発展までを具体的な事例を取り上げながら丁寧に解説・紹介した本邦初の成書であり,感染症の理論・予防・治療における数理モデルの利用に関心をもつ学生・研究者にとって必携の書である。なお,増補にあたっては,COVID-19に関する一章を新たに設け,各章には最近の進展・動向を補足している。 (主要目次) 1. 基本再生産数R0と閾値原理 2. 感染症数理モデルのデータサイエンス 3. 常微分方程式と体内感染ダイナミクス 4. 時間遅れのあるモデル 5. 感染症の空間的な伝播を記述する数理モデル 6. 感染症の確率モデルと複雑ネットワーク 7. エイズと性感染症の数理モデル 8. 季節変動と感染症動態 9. 病原体の進化と疫学動態 10. COVID-19 の数理モデル解析
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